第35回 御木本メソッドアカデミー認定講師と研修生のためのセミナー

2025年9月22日(月)、第35回御木本メソッドアカデミー認定講師と研修生のためのセミナーがアートライブ品川にて開催されました。今回は、山本光世特別講師と恩田明香特別講師による対面セミナーです。

「御木本メソッドの根幹の再確認とタイプ別指導法~もっと伝わるレッスンを目指して」というテーマで、御木本メソッドの考え方と指導のポイント、トレーニングの計測方法や手のタイプに応じた導き方の具体例を紹介しました。

山本 光世特別講師

はじめに山本特別講師による講話です。御木本メソッドの基本理念や指導における大切なポイントを振り返りました。集中すると、その動作の精度は高くなる。トレーニングで脱力と必要な筋を適切に使うことを学習していくことで、不必要な動きがなくなると弾けるようになっていく。ゆえにトレーニングは独立性を重視して行うことが効果的であることを、脳科学の知見を交えて説明しました。さらに御木本メソッドの中でも最重要課題のひとつである、第二関節から先の支え方の指導方法について実演解説しました。

恩田 明香特別講師

恩田特別講師は、手指の構造がやわらかい特殊なタイプの人への指導のポイントについて説明しました。腕の重みを指先まで伝える中継地点となる手首から付け根の関節の支え方や、エネルギーを効率よくピアノに伝えるために必要な中手骨の安定と手のひらの支えを作るためのトレーニングを紹介しました。

一方、手が硬く力みやすい人に対してのアプローチ方法として、打鍵の瞬間に指の付け根を素早く脱力させる方法や上腕を使った弾き方について、山本特別講師が実演指導を行いました。エクササイズ集やショパンエチュードOp.10-4を題材にして、上腕や指の関節の使い方による音色の違いを解説し、さらに手のタイプが全く違う山本特別講師と恩田特別講師がOp.10-4を弾いている時に、手指や腕の使い方の感覚や意識している場所が違うことに触れ、手の個性に応じて指導方法を工夫する必要があることを話しました。

グループワークでは、参加者同士でトレーニングの計測を行い、手の触り方や声がけの仕方についてフィードバックし合うことで、多くの実践的な学びを得る機会となりました。

対面セミナーの良さは、実際に手を取り合って、その感触や微妙な角度、タッチによる音の違いを肌で感じ取ることができる点です。ホールの広さもちょうど良く、講師と受講生とが一体感を感じられる心地よい空間でしたし、スタインウェイのピアノもコンパクトながら微妙なタッチの変化に敏感に反応してくれる素晴らしいピアノでした。

セミナー後のお茶会では、とらやの季節限定「栗粉餅」とルピシアの香り豊かなお茶を楽しみながら、セミナーの感想や今後取り上げてほしいテーマなどについて、和やかな雰囲気で意見交換しました。

参加者からいただいた感想を一部ご紹介します。

前半のご講義では、手指の動きのメカニズムに関するお話や、レッスンを行う立場としての心構えについてのお話を通して、改めて考えを整理する時間になり、また、後半の実践編ではモデルそれぞれの手指に合ったアプローチや声がけなど、多くのことを学ばせていただきました。特に、最後のグループワークは身につくことがたくさんあり、今後もぜひやっていただきたい思いです!!
そして、手の特徴が全く異なる、恩田先生と山本先生コンビによる対談もぜひシリーズ化していただきたいくらい面白かったです!(色々な体操でのお話をもっと聞きたいです!)

自分の手指に集中して意識的に音を聴きながら鳴らす時に脳が働いている感覚がわかる時があります。その感覚を生徒たちに説明ができるように思考を組み立てる手立てを頂けたと感じております。また、手のタイプにより指導のポイントが違うということを目の当たりにし、正直驚きました。しっかりと観察してより適切な対応をしなければならないと、心を新たにいたしました。今回得た貴重な経験を活かせるようにしたいと考えております。

講演の内容も目から鱗の内容があったり、理解が深まる内容だったり、とても有意義な勉強会でした。先生同士で指を触り合って、グループセッションさせていただき、またそれも良かったです。

最後に、常に心に留めておきたい次の言葉で締めくくりたいと思います。

トレーニングへの考え方

  1. 弾く、という心からの欲求が、指を動かし、音を出す (奏でる)。
  2. しかし、全ての人が音楽的欲求によって思うように弾ける訳ではな
    い。
  3. 弾き癖及び不必要な力は手の構造と脳の性質に関係がある。
  4. 合目的的な弾く動作を身に着ける体操をする。
  5. トレーニングは、集中するために、脳の状態をクリアにして行う。
  6. しかし、個人差を利用して弾くべきである。

※ 1994年頃の御木本先生の講座冒頭要旨(案)より。

平日のお忙しい中、日本各地からご都合をつけてご参加くださった皆様に、心よりお礼申し上げます。

アートライブ品川の地下会議室にて。みなさん素敵な笑顔です!

2025年度ピティナピアノコンペティション全国大会プレ特級にて山﨑 里奈さん(大学4年)が銅賞を受賞されました。

2025年度ピティナピアノコンペティション全国大会Pre特級にて山﨑 里奈さん(大学4年)が銅賞を受賞されました。

2025年度ピティナPre特級 最終審査結果一覧

全国大会では J.S.バッハ《平均律クラヴィーア曲集第2巻》第6番 ニ短調 BWV875、そして シューベルト《ピアノソナタ第20番 イ長調 D.959》全楽章 を演奏されました。

全国大会の演奏は、素晴らしい集中力と心に染み入るような表現力が合わさり、魅力的な演奏でした。特にシューベルトの豊かな音楽の中にある優しさ、そして孤独感を見事に表現され、強く惹き込まれました。

山﨑さんは東京音楽大学で学ばれ、これまでにピティナ・ピアノコンペティション全国大会で F級ベスト賞、G級入選 などの実績を積まれています。

山﨑さんからのコメントです。

「御木本メソッドを通して、身体の使い方、脱力、指の独立など、演奏する上で大切なことを多く学びました。以前は練習するとすぐ疲れてしまい身体を痛めたり、音が響かないことに悩んでいましたが、本村先生の丁寧なレッスンを重ねるうちに、自分でも驚くほど手や姿勢が変わり、楽に弾けること、また自分の求める音色で表現できるようになりました。さらに今後の演奏に活かしていきたいと思います。」

今後のご活躍を楽しみにしております。

2025年度ピティナピアノコンペティション全国大会プレ特級にて石山 和暉さん(大学4年)が銀賞を受賞されました。

2025年度ピティナピアノコンペティション全国大会Pre特級にて石山 和暉さん(大学4年)が銀賞を受賞されました。

2025年度ピティナPre特級 最終審査結果一覧

 全国大会ではベートーヴェン ピアノソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3 第1楽章

ブラームス 8つのピアノ小品 Op.76

サン・サーンス=リスト死の舞踏 

を演奏されました。

演奏は作曲家の違いによる音色の変化、考えられた構成力等大変魅力的な演奏でした。

ブラームスは推進力の有る奥深い音色での音楽でした。

サン・サーンスも作品の持つ曲のキャラクターの表現力は心に残る素晴らしい演奏でした。

石山さんは東京大学医学部での学業と音楽を両立しながら勉強されています。これまでにも学生音楽コンクール東京大会にて第1位等数々受賞しました。

石山さんからのコメントです。

「本村先生には、小中学生の頃から指の独立と手の形の基礎を作っていただきました。また元々手首や肘に余計な力を入れて固めてしまう癖があったところ、体幹を軸に腕を背中から大きく使うよう指導していただき、まだ課題はありますが自由に自然な音楽を発せられるようになってきたかなと思います。」

今後のご活躍を楽しみにしております。

第44回飯塚新人音楽コンクールピアノ部門にて丸山凜さん(院生1年)が第1位を受賞されました。

第44回飯塚新人音楽コンクールピアノ部門にて丸山凜さん(院生1年)が第1位を受賞されました。

本選にはプロコフィエフ「サルカズムOp17」を見事に弾かれました。その演奏は『数多くの優れたコンテスタントが集う中で、彼女の演奏はひときわ際立ち、深い洞察力と繊細な表現力で観客を魅了しました』との高い評価を受けました。

丸山凜さんは首席(桐朋学園大学)で卒業され令和6年度音楽大学卒業演奏会(皇居内桃華楽堂)に出演されました。又数々のコンクールにも受賞されました。現在ピアニストとして活躍されています。

丸山凜さんは高校1年頃から御木本メソッド学ばれ

「メソッドを通じて身体感覚や指の使い方等を身につけました。習慣的なトレーニングが、本番での安定した演奏につながっている事を実感しました。音色のクオリティを更に高めていけるよう引き続き取り組んでいきたい亅と語られました。

今後のご活躍を心より楽しみにしております。

進藤実優さん : 第19回 ショパン国際ピアノコンクール 本大会出場決定のお知らせ

進藤実優さん(現在ドイツ留学中)が、第19回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選を見事通過され、2025年10月にワルシャワで開催される本大会への出場が決定いたしました。

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第5回 ノアンショパンピアノコンクール カテゴリーA1にて益田美音さん(高校3年)が第1位と、ノアンのジョルジョサンドの館で演奏出来るショパンナイト賞を受賞されました。

益田美音さんは本選にてショパン作曲Op.49ファンタジーとOp.60バルカローレを演奏しました。

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第5回 ノアンショパンピアノコンクール カテゴリーB1にてトゥルーラブ真凛さんが第1位と、ベヒシュタイン・サロン賞を受賞されました。

第5回ノアンショパンピアノコンクール カテゴリーB1にてトゥルーラブ真凛さんが第1位と、ベヒシュタイン・サロン賞を受賞されました。

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第34回 御木本メソッドアカデミー認定講師と研修生のためのセミナー 

2025年5月18日(日)、第34回御木本メソッドアカデミー認定講師と研修生のためのセミナーをオンラインで開催しました。司会進行は恩田 明香特別講師です。

今回は初の試みとなる「講師による発表シリーズ第1回」として、認定講師第1期生である3名の講師に、それぞれ自由なテーマで発表していただきました。2015年から10年間、認定講師として活躍しているベテランの先生方です。

柴田 牧講師〈音を聴くことと伸二関の意識の関係性〉

自分自身の子ども時代から御木本メソッドに会う前までの奏法への疑問や葛藤、講師になってから現在の指導とピアノトリオの演奏活動を通して得た閃き、伸2関を意識することと音を聴くことの繋がる瞬間、そしてそれまでとは違う集中が必要になることについて、5名の生徒のレッスンの事例を通して具体的に紹介しました。耳が閉じた状態ではトレーニングが演奏に活かされないこと。日常的にメソッドの重要なポイントを指導内容に盛り込めば、正しい方向に導くことができること。トレーニングをコツコツと真面目に積み重ねてきた生徒が、ある日、指の意識と付け根の脱力、肩甲骨から弾く意識を持ちつつ、そこに音楽的イメージと音を聴く耳が統合された瞬間、サナギから蝶に変身するかのように音が劇的に変化したエピソードなど、生徒の能力に合わせて根気よく指導し続けている姿勢からは多くの学びがありました。また、伸2関を意識するために効果抜群のグッズを紹介しました。

柴田 牧講師

谷垣夏海講師:〈年代・条件別の生徒から見る御木本メソッドの多様性について〉

現在レッスンを行っている生徒を3つのカテゴリーに分け、それぞれのモデル生徒についてレッスンの目標設定や指導項目、生徒の反応、成長の様子、他の先生からの評価などについて説明しました。それらの経験から、生徒の年齢、能力、立場に応じて如何に柔軟に対応する必要があるかを痛感していることを発表しました。トレーニングはどの生徒にも有効であり、未就学児のレッスンではトレーニングを準備体操として取り入れ、演奏時にはトレーニングで得た感覚を自然に呼び起こすような声がけをしていること。音高生には成長発達に適したトレーニングを指導しながら、ホールでより音楽的で響きのある演奏ができるように体との連動性を重視して結果が出てきたこと。副科ピアノの生徒にトレーニングを行った結果、専攻楽器の演奏でも姿勢の改善や脳の働き方や耳の使い方が変化し、思わぬ相乗効果があったことなど、常に音楽的な演奏につながるように工夫しながらトレーニング指導を行っている様子がありありと伝わってきました。

谷垣 夏海講師

藤田 尚講師:〈日々のレッスンを通しての学び〉

現在レッスンを行っている生徒を3つのカテゴリーに分け、それぞれの様子と感じている学びについて発表しました。特に興味深かったのは、テクニックに困って来る音高・音大生への向き合い方です。トレーニングで得た能力が音楽的な演奏として活かされるためには、技術的欠陥を技術で埋めようとするのではなく、正しい音楽的解釈によって自然に結びついていくものであること。トレーニングや打鍵指導をしても良い変化がない場合、本人の思い込みや音楽的な好みによって受け入れ難い状況になっていることがあります。生徒に限界突破が必要な場合、じっくり対話を重ねて生徒の理想と現実的な折り合いがつけられるよう、何をすべきかを具体的に示しながら寄り添っていく姿勢が印象的でした。すでに沢山練習を重ねている悩み多い生徒たちに、「自分だけができないわけではない。こう練習したら弾けるんだ」という希望を持ってもらいたい、夢を与えられる指導者でありたいと抱負を語りました。

藤田 尚講師

各講師の発表の後は、参加者からの質問や感想を受けて有意義な意見交換が行われました。どうしたら生徒をより良い方向に導けるのか、一人一人と真摯に向き合って愛情深く指導している様子に深い感銘を受けました。

現在、御木本メソッドアカデミーの講師は15名となりました。経験を積んだ講師の皆様にお話いただくことで、御木本メソッドを多角的にとらえ、未来につながる知恵や発展のヒントを模索していきたいと思います。研修生の皆様にとっても、講師の活躍する姿や考え方から学ぶことは多く、研修の励みになると思います。今後もぜひ、シリーズ企画として継続していきたいと思います。

お忙しいところ貴重な発表をしてくださった講師の皆様、また、ご参加くださった皆様に、厚く御礼申し上げます。

2025年度 講師認定証授与

2025年2月、オンラインによる認定試験を行いました。YouTubeにアップロードしていただいた演奏動画やトレーニングデータ、研修レポート等を基に、面接試験で総合的に審査した結果、新たに1名の研修生が試験に合格しました。

木下 千鶴さん

木下千鶴
この度、認定講師試験に合格させていただき、大変光栄に存じます。温かくご指導くださった先生方に心より感謝申し上げます。今回の合格に甘んじることなく、常に学びを深めながら、生徒さん一人ひとりに寄り添う指導者を目指して、今後も精進してまいります。

今後は御木本メソッドアカデミーの認定講師として研鑽を積みながら、より一層のご活躍を心よりお祈りいたします。